日本酒と健康 .

日本酒にはがん抑制効果がある

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◆東日本と西日本で違う肝がん死亡率

長期にわたる大量の飲酒は、アルコール性肝硬変を介して肝がんを引き起こすのではないかとされてきました。かつてドイツのレールバッハ博士(1967)が「飲酒量とアルコール性肝障害は密接に関連しており、1日平均180g(日本酒で約7.5合)以上のアルコールを15年以上摂取すると、アルコール性肝炎や肝硬変の発生頻度が非常に高くなる」と報告。こうした総アルコールだけに基づくヨーロッパの知見がそのまま紹介された結果、“日本酒換算”で1日平均7合以上飲むとアルコール性肝障害を引き起こす、と短絡的に結びつけられました。
しかし実は、日本における肝がんの死亡率には大きな地域差があります。日本酒など醸造酒を多く飲む東日本と比べて、蒸留酒(焼酎・ウイスキー他)の消費が多いとされる西日本の方が肝がんでの死亡率が高く、これは戦後ほぼ一貫した地域特性となっています。(図1)

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◆実験室でがん細胞を萎縮させた日本酒

国立がんセンター研究所疫学部では、40歳以上の健康成人約265,000人を対象に1965年から17年間かけて大規模なコホート研究*を行っていますが、その資料によると、日本酒を毎日飲用する者の年齢別標準化死亡率比は、非飲酒者と比べ全死因が0.86、全部位のがんが0.79、胃がんが0.61と明らかに低下。同研究所疫学部代表でもある平山雄部長は「全がん、特に胃がんのリスクを有意に低下させていることは注目すべき新事実である。最近、秋田大学で実験室内研究によって日本酒にがん予防効果があることを認めているが、それを支持する疫学的根拠と言えるのではないか」とコメントしています。
なお秋田大学での実験室内研究とは、純米酒で作成した試料に様々ながん細胞を入れて培養するというもの。結果は、純米酒100mlを2.5mlに減圧濃縮し64倍に薄めた試料の場合でがん細胞の90%、128倍に薄めた試料でもがん細胞の約50%が萎縮または死滅(壊死)しており、一方スコッチウイスキーとブランデーの試料では逆にがん細胞は増え続けました。

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◆飲酒者より禁酒者の方ががん死亡リスクが増加

1988年からは、文部省特定研究として約125,000人を対象に「コホート研究による発がん要因の評価に関する研究」がスタート。そのうち1992年までの5年間のがん死亡者(760人)について、特に飲酒の影響に絞って中間データを検討したところ、飲酒者は禁酒者に比べ全がん、胃がん、肺がん、及び肝がん・肝内胆管がんにおいて相対リスクが男女とも低い値を示しています。(図2)


表1 飲酒が死亡者を減らしている病気
  飲酒者 禁酒者 非飲酒者
全死亡(男女) 0.85 1.77
1.00
全がん 0.89 1.56
口唇、口頭、咽頭がん 1.29 1.79
食道がん 2.55 3.08
胃がん 0.87 1.43
結腸がん 1.07 1.31
直腸がん 0.87 1.77
肝、肝内胆管がん 0.83 3.64
胆のうがん 0.77 1.81

1.文部省科研、がん特別研究(代表・大野良之)、1995
2. 禁酒者は現在飲酒をやめている人。非飲酒者はほとんど飲まない人。
3. 非飲酒を1とした場合の割合で表す。たとえば(全死亡)については非飲酒者100人の死亡に対して飲酒者が85人、禁酒者が177人となる。

さらに2年の追跡データを加えた7年間(1988〜94年)の死因別の死亡リスクを見ても、非飲酒者を1とした場合、飲酒者の全死亡リスクは0.85、全がんリスクは0.89と明らかに低下。これに対し禁酒者(飲酒をやめた人)の全死亡リスクは、皮肉なことに1.77と高くなっています。
がん死亡リスクが明確な高低を示したものを取り上げてみると(表1)、全部位がんで見ると飲酒者のがん死亡リスクは明らかに低く、禁酒者は高くなっています。肝がん・肝内胆管がん、食道がん、胃がん、胆のうがん、気管・気管支がん・肺がん、子宮がんでも、同じく禁酒者の死亡リスクが高くなっています。

*コホート研究:一定の集団(コホート)を調査・追跡してどのような結果になるかを分析する研究方法

滝澤先生の「1日2合 日本酒いきいき健康法」につきましては、予め著者および出版社より当ホームページへの転載の許可を得ております。
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