「おいしさの秘密は酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」の巻
今回は、今年菊正宗に入社して3年、当社文化事業部 味覚研究室の岩田あゆみレポーターです。
岩田さん (岩田) 皆さんこんにちは!キクマサに入社して3年目の岩田です。よろしくお願いします。ところで今日はキクマサで今一番ホットな話題、「おいしさの秘密は酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」についてご紹介したいと思います。今、お店に並んでいる菊正宗の商品の原料欄には、「米・米麹」という表示がついているのをご存じですか?私は社員なので当然知っています。でも…はずかしいことに、実は私もその意味がよくわかりません。そこで今日は、当社の製造責任者、原常務にお話をうかがうことにしました。
 
岩田さん
岩田あゆみ
平成13年度新入社員
甲南大学・法学部・経営法学科卒業。 現在、菊正宗の文化事業部 味覚研究室で、酒と料理との相性について研究中
 
 
  酒造りのために生まれた酒造好適米(心白米ともいう)。
普通のお米と比べてみると・・・。
  岩田さん (岩田) 常務、おはようございます!
  原常務 (原) はい、おはよう。
  岩田さん (岩田) ところで常務、質問があるのですが・・・。
  岩田さん (岩田) 昨日、お酒やさんに行ってキクマサさけパックを買ってきたんですが、説明書きのところに「こうじ米(米こうじにする米)には酒造好適米を使用し・・・」って書いてあったんです。「酒造好適米」って何ですか?
原常務
菊正宗酒造株式会社 
常務取締役技術担当兼
総合研究所長
原 昌道
農学博士、京都大学農学部卒、元国税庁醸造試験所長
  原常務 (原) まずこの図をみてごらん。お米は大きく分けると、「うるち米」と「もち米」に分かれるが、酒造好適米というのは普段われわれが食べる「うるち米」の一種なんだ(図1)
   
図1:お米の分類
  岩田さん (岩田) じゃあ酒造好適米ってうるち米の内の、日本酒専用のお米ということですね。それじゃあ、同じうるち米の一般米とはどう違うんですか?
  原常務 (原) 実物を見せてあげよう。これは酒造好適米の代表的なものの一つ、「山田錦」の玄米だ(写真1)。一般米の「日本晴」と比べてみなさい(写真2)
 
写真1:「山田錦」の玄米 写真2:一般米の「日本晴」
  岩田さん (岩田) なんだかお相撲さんみたいな名前のお米ですねぇ。ふむふむ。まず一粒一粒が大きいみたいですね。
  原常務 (原) そうだね。まずお米の大きさは普通、千粒当たりの重さで比較するんだが、「日本晴」のような一般米が通常22〜23gなのに対して、酒造好適米では25g以上、「山田錦」では27gくらいはある。  
  岩田さん (岩田) へぇ。名前だけじゃなくて、大きさもお相撲さんみたいなんですね。
  酒造好適米の秘密は「心白」にあり。
その純白のベールに包まれた秘密とは・・・。
  原常務 (原) 真中の白っぽいところは・・・。こっちの白米のほうがもっと分かりやすいね(写真3・4)
   
 
写真3:山田錦白米 写真4:日本晴白米
 
  岩田さん (岩田) わぁ。日本晴は透明なのに、山田錦の白米は真ん中が真っ白です。これはいったい何なんですか?
  原常務 (原) これは「心白(しんぱく)」といって、酒造好適米の特徴の一つなんだ。だから心白米ともいうんだ。でも心白の白い部分には特殊なものが詰まっているわけではない。中心部分が白くみえるのは米の中に隙間があるからなんだ(詳しくはこちら1)
  原常務 (原)  でも、隙間といってあなどってはいけないよ。これについてはあとで説明するとしよう。
  岩田さん (岩田) では、大きさと心白以外の酒造好適米の特徴を教えてください。
  酒造好適米(心白米)の真価はこうじ造りにあり。
だから旨い酒ができるんだ。
  原常務 (原) 酒造好適米は成分的にはタンパク質や脂肪が少ないという特徴がある(詳しくはこちら2)。 それ以外に酒造好適米は水に漬けた時に水を吸収しやすい、蒸した時には「外硬内軟」といって外側はさらっとして硬く、触ってもべたべたしないのに、内側は水分を保持していて軟らかい蒸米が出来る、などの特徴がある。さらっとしてべたべたしないのは、米こうじ造りで特に好都合なんだ。
  岩田さん (岩田) さっき心白の隙間について教えてもらいましたが、この隙間ってどんな意味があるのですか。  
  原常務 (原) これまたいい質問だ。心白の隙間はこうじ造りに大いに関係がある。まず米こうじの役割だが、これは酒造りに必要な様々な酵素を供給することにある。(こうじの役割の項へ)ただ、どの酵素でもたくさんつくればいいというものではなく、美味しい日本酒を造るには酵素間の量的なバランスが極めて重要なんだ。酵素バランスの悪い米こうじを使って仕込むと、ガラの悪い日本酒になってしまう。極端に悪いと腐造につながる。酵素のことなど分からなかった昔には、杜氏さんたちは米こうじを見てその良し悪しを判断していたんだよ。  
  岩田さん (岩田) はぜ込みのことかしら。酒蔵で聞いたことがあります。  
  原常務 (原) その通り!「はぜ込み」は科学の発達した現在の酒造りにおいても最も重要視されているんだ。(図2)はぜ込みとは麹(こうじ)菌の菌糸が蒸米の内部まで入り込んだ状態を示すものだが、はぜ込みがよいこうじでは香りがよく(わずかに焼き栗様の香り)、手に握ったときにふくらみがあり、アミラーゼやプロテアーゼなど各種の酵素の酵素力のバランスのよい、いわゆる酒造に適した良い麹(こうじ)が得られる。そして一般的に酒造好適米ではこのはぜ込みがよくなるんだ。ここで心白が重要な働きをしていて、心白の隙間に沿ってこうじ菌の菌糸が生育できることが、はぜ込みに良い影響を与える。つまり酒造好適米(心白米)でこうじをつくると無理なくはぜ込み、良いこうじができるというわけなんだ。実際に米こうじを手にとってよく眺めると心白という隙間に沿って麹(こうじ)菌が生育しているのがわかるだろう。(図3)
図3:酒造好適米(心白米)ならびに一般米の米こうじの横断面
一般米ではこうじのはぜ込みは蒸米表面から均等に中心に向かって進むが、山田錦などの心白米では心白部分でよりはぜ込みがより進みやすい(→←部分)。
図2:はぜ込みの様子
米こうじの横断面を顕微鏡で観察した。白く見えるのがこうじ菌糸が繁殖している部分。さらに拡大するとこうじ菌糸が網目状に「はぜ込んで」いることがよく分かる。
  岩田さん (岩田) 米こうじの話はちょっと難しかったけど、酒造好適米(心白米)が日本酒造りにとても適したお米だということが分かりました。食べるのにおいしいお米と酒造りに適しているお米とはまったく違うことですね。
  原常務 (原) そのとおり、コシヒカリのように食べるのにおいしいお米というのは噛んだときの弾力性など、食感が重要なのだが、酒造りのための米の評価はまったく違ってくるんだ。「酒造好適米がなぜ酒造りにとっていいのか」ということに関してはまだまだわかっていないことが多く、現在でも研究が続いているんだ。
 
    というわけで、今日は「おいしさの秘密は酒造好適米(しゅぞうこうてきまい)」についてご紹介させていただきました。もし今回の記事について、ご意見、ご感想等がございましたら、菊正宗ホームページ作成係までE-mail、FAXもしくはお手紙をお寄せくださいませ。お待ちいたしております。さらにもっと詳しく酒造りについて知りたい方は、当社の日本酒通信講座日本酒ゼミナールに是非ご参加くださいますようお願い申し上げます。
   

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