樽酒はどんな食品と相性が良い?

 杉のさわやかな香りが特徴の樽酒はどのような料理と相性が良いのでしょうか?樽酒はさわやかな香りを持っているためか、うなぎの蒲焼きなどの脂っこい料理と相性が良いとされてきました。食べてみて実際に相性が良いと感じるものの、科学的な根拠がなく、経験的に語られているだけのものでした。

樽酒と口中に残る油っぽい感覚の関係

 樽酒とうなぎの蒲焼きの相性の良さの秘密を探るために、樽酒と油の関係について官能試験を行いました。油を多く含む食品としてマヨネーズを摂取したあとに樽詰めしていない清酒(対照酒)と樽詰めした清酒(樽酒)を飲んでもらい、その後の口中の感覚強度「マヨネーズの味」「油が残っている感じ」を5段階で評価してもらいました。その結果、対照酒に比べて樽酒では両方の感覚強度が低下しており、樽酒は口中の油の感覚を軽減する効果が高いことが示唆されました。また、試験はノーズクリップを着用して行ったため、この結果はさわやかな香りによる効果ではないことも確認されました。

fig1
官能試験結果

樽酒と油の親和性

樽酒が口中の油の感覚を軽減する原因として、樽酒が油と混ざりやすいために、口中の油が洗い流されやすくなっていることが原因の一つと考えられました。そこで清酒と油の親和性を調べるためにWilhelmy plate法で清酒と油の間の界面張力を分析しました。
 試験の結果、様々な油において、対照酒に比べて樽酒では界面張力が弱くなっていました。界面張力が弱いと2つの物質が乳化しやすいために、油が洗い流されやすいことになります。つまり、樽酒は油を乳化しやすいため、口中の油を洗い流しやすいことになります。
 これらの結果から、樽酒は油を乳化しやすく、洗い流されやすい状態にするため、うなぎなどの脂っこい食品を食べた後の口中の油感を軽減させ、おいしく食べることができると考えられます。

fig2
界面張力測定結果

<参考文献>
高尾佳史、高橋俊成、溝口晴彦:醸協, 109, (4), 305-309 (2014)