日本酒の楽しみ方

日本酒は季節や料理に合わせて、
燗・ひや・冷酒など様々な温度でおいしく飲めるお酒です。
春はタケノコの木の芽和えを肴に、純米酒をひやで・・。
夏はキーンと冷やした樽酒に、鮎の塩焼き、トコブシ・・。
秋は本醸造の燗酒に海の幸、山の幸、里の実り・・。
冬は熱燗に鶏の水炊き、ぶたしゃぶ、カキの土手鍋・・。
こんな風に日本人は、お酒の温度に合わせて四季の味を味わってきました。
燗酒なら備前や志野などと徳利や盃をあれこれ選ぶのも楽しみの一つです。
冷酒なら涼しげなガラスの酒器が似合いますが、たまには木杯やワイングラスを用いても楽しいものです。
この巻ではお酒と温度の知識を中心に、楽しみを広げるちょっとしたコツを皆様にお教え致しましょう。

上手なお酒の飲み方

適量のお酒は血液のめぐりをよくし、ストレス、筋肉疲労を取り去り、消化器官の働きを活発にします。また就寝前に飲むお酒はゆったりとした深い眠りに導き、体調を整え、老化防止にも役立つと言われています。適量のお酒を好みの肴と共にゆっくり楽しみながら飲み、決して飲み過ぎないことが、お酒を「百薬の長」にすることになります。

(1)空きっ腹では飲まない

空きっ腹ではアルコールの吸収がよく、酔いが早くなります。その点脂肪を含む食品はアルコールの吸収を遅らせますから、宴会などの前には牛乳やチーズを少し食べておくと急に酔ってしまうこともないでしょう。

(2)料理を食べながら飲む

肝臓を守るためにも、肴に気を配り、低脂肪で高蛋白の魚・豆腐・レバー・肉などを食べながら飲むことが大切です。更にビタミンB群を多く含んだ食品*を摂ることも肝臓には大切なことです。

(3)自分のペースで陽気に飲む

宴席で色々な人から勧められるままに全ての杯を空けてしまうのは考えもの。あくまで自分のペースで、体調を考えて陽気に味わいながら飲みたいものです。

(4)チャンポン・はしごに注意する

ビール・日本酒・ウィスキーと種類を交えてチャンポンをしたり、次々店を変えて飲み歩くと、飲んだ量がわからなくなり、飲み過ぎてしまうことになります。

※ビタミンB群を多く含んだ食品
レバー・豚肉・卵・魚介類(うなぎ・小魚・魚卵)・大豆製品(納豆・豆腐)・ほうれん草・海藻

飲み頃の温度

いくら飲み頃の温度に燗をしても、盃に注がれたお酒をすぐ飲まずそのままにしておくと、すっかり冷めてしまって、せっかくの燗が台無しになってしまいます。徳利のお酒についても同様のことが言えます。だからといって熱すぎる燗酒を「すぐに冷めてちょうどよくなるだろう」というのは間違った考えです。

適温に燗をした徳利のお酒は、厳密には一度に飲みきってしまわない限り、同じ温度で飲み続けることはできません。

すなわち「燗」に限らず、提供する側の心得として最初の一杯を最適温度、つまり「飲み頃温度」にすることが最も肝心なことです。

お酒の種類と飲み頃の温度(参考)
冷やして
7~10℃
常温
約15℃
ぬる燗
約45℃
上燗
約50℃
熱燗
約55℃
吟醸酒 × ×
純米酒
本醸造酒
普通酒
樽酒 ×
生貯蔵酒 × × ×

冷 酒

暑い夏には、やはり日本酒も冷やして飲みたいものです。

冷酒の飲み頃温度はビールなどと同じ7~10℃ですから、いつも容器ごと冷蔵庫に冷やしておくと、手軽に「冷酒」が楽しめます。また、生酒や生貯蔵酒のビンを氷と共にアイスペールなどに入れると、もうそれだけで「おいしさと清涼感」がテーブル一杯に広がります。

お酒だけでなくグラスも冷たく冷やしておきましょう。

吟醸酒などでは、くだいた氷に花なども飾って、お酒だけでなく、涼しい気分も楽しみたいものです。

生酒や生貯蔵酒など冷やして飲むタイプのお酒は、アルコール度のやや低い口当たりのさらっとした、飲みやすいタイプのお酒が多いので、「ひや」同様飲み過ぎに気を付けて下さい。

また、吟醸酒など酒質によっては10~15℃が飲み頃で、冷やしすぎては味わいの乏しいお酒もあります。

ひや(常温)、ロック

ひや(常温)

燗も冷やすこともしないで、常温でお酒を飲むことを「ひや」といいます。常温と言ってもその時の室温と同じ温度というのではなく、夏は少し冷やして、冬は少し温めて、15~20℃くらいの温度が「ひや」の飲み頃温度になります。

味と香りのバランスのよい「ひや」は、日本酒の持つ本来の味がわかると、酒通の方が好まれる酒温です。きき酒の温度がちょうどこのくらいの温度になっていて、舌の感覚が最も敏感なところです。

「親の意見とひや酒は後から効く」と言われているように、口当たりがよく、器も大きくなりがちな「ひや」は、飲むペースが早くなり、燗酒に比べて酔いの回りも遅いことから、飲み過ぎないよう注意が必要です。

オンザロック

オンザロックは、冷やしてロックグラスに大きめの氷を入れ、よく冷やした日本酒を注ぎます。氷があまり溶けないうちに飲める量(50~60ml)を注ぐことがポイントです。酒質は原酒や純米酒、また生酒なども合うようです。

燗酒の種類

お酒の飲み頃の燗の温度は、酒質や外気温によって違ってきます。また個人の好みによっても様々ですが、日本酒の場合、徳利内で測って50℃前後が良いとされています。熱すぎるとアルコールの強い刺激ばかりが感じられ、本来のお酒の旨味がなくなってしまうからです。

また「辛口のお酒はぬるい方が良い」とか「甘口のお酒は熱燗が良い」等々、燗の温度についてはいろんな意見もありますが、要は好みの問題で、自分がおいしいと感じる温度にして飲むのが最高です。

40~60℃にお酒を温めることを燗と言っていますが、55~60℃を熱燗、40~45℃をぬる燗と言い、その中間の50℃前後を適燗(または上燗)としています。60℃以上に温めることは避けた方がよいでしょう。

温める温度によってお酒の味、香りに違いがでてきますから、酒質に合った、そして好みに合った温度にすることは、お酒を楽しむ上では大変重要なことです。

また昔から「燗は人肌」と言われますが、体温の35~37℃では低すぎるようです。湯煎で燗をしたとき、指を徳利の底に触れてわずかに温かく感じた時が適燗だと言うことを「人肌」と表現したのでしょう。

燗温の目安
60℃ 熱燗
55℃ 適燗(または上燗)
50℃
45℃
40℃ ぬる燗

※但し徳利の中の温度