樽酒には杉樽由来成分が豊富に含まれる

 樽酒は杉樽に貯蔵することでさわやかな香りをまといます。この貯蔵中に杉樽由来の様々な成分が清酒中に溶け込みます。これらの成分のうち、主要な物としてセスキテルペン類やジテルペン類、ノルリグナン類が挙げられます。この中でも最も多く含まれているのがセスキテルペン類で、ガスクロマトグラフで分析することで10種類以上の成分が確認できます。これらの成分は杉樽から出てくる成分なので、杉樽に貯蔵していないお酒では検出されません。

樽酒セスキテルペン
ガスクロマトグラフでのセスキテルペン類の分析

 樽酒に含まれるセスキテルペン類には、エピクベノール、β-オイデスモールなどが挙げられますが、これらの成分は漢方薬などに含まれている成分も存在します。たとえば、β-オイデスモールは漢方薬の蒼朮の主成分でもあります。

<参考文献>
松永恒司、古川恵司、原昌道:醸協, 97, (7), 529-534 (2002)
松永恒司、高橋孝悦、古川恵司、原昌道:醸協, 99, (8), 585-590 (2004)
松永恒司、高橋孝悦、溝口晴彦:醸協, 103, (10), 779-785 (2008)