第6巻 日本酒の歴史(前)

日本酒のルーツ

A.稲作以前

(1)果実の酒

長野県八ヶ岳高原から発掘された縄文中期の有孔鍔付(ゆうこうつばつき)土器の内側に、ヤマブドウ・クサイチゴ等の種子が発見されたことから、縄文人は祭に、土器へヤマブドウ等を仕込み、アルコールの芳香が出るのを待ったと考えられます。

(2)雑穀の酒

古代人は、アワ・ヒエ等の雑穀の酒についても知識があったものと推定されます。照葉樹林文化地帯から雑穀の種子だけが単独で伝播したとは考えられず、焼畑耕作法・栽培法・農耕儀式と共に利用法としての雑穀の酒造りも当然伝わってきたと思われます。

B.水稲の伝来

紀元前2,3世紀頃、中国・江南の呉越地方から北九州、南朝鮮に水稲文化が伝えられました。また大陸から朝鮮半島を経て金属文化も伝えられ、両者が混ざり合って弥生文化の華が開きました。

稲作は北九州より東へ、山陰・瀬戸内と広がり、畿内から伊勢・濃尾平野へと伝わってきました。低地に新しい田を次々と拓いていった前期弥生人は、稲作だけでなく米麹を利用した酒造りも同時に伝えていきました。