菊正宗酒造株式会社(本社 神戸市東灘区、社長 嘉納治郎右衞門)総合研究所は、低精白米を用いた清酒仕込みにおいて、バナナ様と表現される香気成分である酢酸イソアミルを高生産する酵母の育種に成功しました。この研究成果を「令和7年度 日本醸造学会大会」(10月9日)において発表します。
清酒の吟醸香は、リンゴ様の香りと表現されるカプロン酸エチルと、バナナ様の香りと表現される酢酸イソアミルの2種類の香りが主成分となっています。通常、吟醸香をよく含むお酒は、高精白した白米を原料として低温で長期間発酵させることにより醸造されます。当研究所では、過去に低精白米を用いた仕込みでもカプロン酸エチルを高生産する酵母HA-14株の育種に成功していましたが、もう一つの吟醸香成分である酢酸イソアミルについても、低精白米仕込みでも高生産する株の取得に向けて育種を続けてまいりました。
酢酸イソアミル高生産株の育種方法については、一般によく用いられている育種法と当研究所が開発した育種法を組み合わせることによって、低精白米を用いた仕込みでも酢酸イソアミルを超高生産する酵母株(TB10)の育種に成功しました。このTB10株を用い、低精白米(精米歩合78%)を原料とした醸造蔵での実醸造では、従来と比較して約5倍もの酢酸イソアミルを含んだ清酒を製造することができました。
菊正宗酒造株式会社では、TB10株を用いて醸造した新酒質の原酒と数種類の原酒を「アッサンブラージュ(※)」した生貯蔵酒を2025年10月6日(月)より『しぼりたてギンルビィ』として新発売いたします。
※フランス語で「組み合わせ、調合」を意味し、ワインカテゴリでは、原酒を混ぜ合わせるという伝統的な技法
■学会での発表
学会名:令和7年度 日本醸造学会大会
発表日時:2025年10月9日(木)9時15分
会場:北とぴあ つつじホール(東京都北区王子1-11-1)
演題:「酢酸イソアミル超高生産酵母の育種」
〇藤原 卓巳、高尾 佳史、高橋 俊成(菊正宗酒造総合研究所)
(〇印は演者)