Web版 KIKUMASA TARU SAKE BOOK 樽酒読本 ~日本酒の真髄は樽酒にあり~

菊正宗

1 making of Taru Sake すべては、「うまい」樽酒をつくるために。1 making of Taru Sake すべては、「うまい」樽酒をつくるために。

樽酒づくりは、とにかく大変。おいしいお酒をつくったうえで樽に寝かし、
さらにびんへ移し替えるのだから。しかし、「質のいい酒と樽、おしみない手間がうまい樽酒をつくる」を
信じ、菊正宗は今日も手間暇のかかる樽酒づくりを行っています。

手間もコストもかけて、本物の杉樽に寝かす。手間もコストもかけて、本物の杉樽に寝かす。

吉野杉でつくられた四斗樽をずらりと並べ、職人たちが黙々と酒を注ぎ入れていく。菊正宗が行っている樽酒づくりの光景です。お酒をたっぷりと抱えた樽はそのまま常温で寝かされ、ゆっくりと流れる時間のなかで自然に杉の香りと成分をお酒に移していきます。そして、飲みごろになればびん詰めし、手軽に飲める樽酒としてお客さまにおいしさを届けます。
木製の樽で貯蔵して木の香りをつけたものが樽酒だとはいえ、香りをつけるだけならもっと早く簡易な方法があるかもしれません。しかし、お酒も樽も生きもの。人の手で都合よく操作しても、決してうまい樽酒にならないのです。

  • ずらりと四斗樽が並ぶ樽場

  • 試行錯誤の樽酒づくりを語る

春夏秋冬。つねにベストな味でなければ意味がない。春夏秋冬。つねにベストな味でなければ意味がない。

「樽びん」の魅力は、丁度よく香りがのったおいしい樽酒をいつでも飲めること。そのためには、人の感覚で“飲みごろ”を見極めてびんに詰めないといけません。1966年に一升瓶に入った樽酒を発売するにあたっても、苦労したのはこの点でした。
樽貯蔵は温度や湿度など環境の影響を受けやすく、お酒を寝かしているのは個別の四斗樽です。すべて同じスピードで進んでくれるほど容易くありません。とはいえ季節を問わず、お客さまに安定したおいしさを提供するのがメーカーの使命。試行錯誤の末、樽酒が育っていく過程を丁寧にチェックし、培ってきた経験をもとに“最適な状態”を判断する以外に方法がないと気づきました。そして、現在も同じ製法でつくり続けています。

生酛づくりの酒があるから、うまい樽酒になる。生酛づくりの酒があるから、うまい樽酒になる。

樽酒づくりの職人はこういいます。「樽はうまい酒をさらにうまくしてくれる。だけど、まずい酒がうまくなることはない」。どんなに良質な樽であっても、魔法の箱ではありません。入れるお酒がいいものでなければ、樽の力も活きないのです。
菊正宗の樽酒に使用しているのは、江戸時代から続く「生酛づくり」の辛口酒。生酛とは自然界の乳酸菌の力を借りて酵母を育てる、菊正宗こだわりの酒造りの技です。他の製法と比べて時間も手間もかかりますが、自然が育んだ生き生きとした酵母がつくりだす力強い味わいは、吉野杉の個性にも負けず、さらなる旨さを身につけてくれるのです。