第1巻 日本酒の作り方

酒母

酒造りにおいて、健全かつ順調にアルコール発酵を行わせるためには、無数の純粋な清酒酵母と、酒造りの初期に雑菌の繁殖を抑えることのできる多量の乳酸が必要です。その目的のために酒母(しゅぼ:もとともいう)が造られます。

酒母は乳酸を得る方法によって生もと系酒母と速醸系酒母に分かれます。

既製の乳酸を添加し7~10日間で造る速醸系酒母に比べ、生酛系酒母は操作が煩雑で難しく、日数も倍以上かかります。

もと摺り桶

生酛は乳酸菌など様々な微生物のバランスのとれた働きにより、自然に乳酸が蓄積し、雑菌が淘汰され、多量の清酒酵母が純粋培養されます。また、アミノ酸やペプチド(アミノ酸が連なった状態)の多い、コクのあるお酒を造るのに適した酒母だといえます。

さらに、生酛で育った酵母を用いてもろみを仕込んだ場合、発酵はもろみ末期になっても衰えにくく、このような発酵の経過は、辛口のお酒造りに適しています。また、もろみ末期の、アルコールが非常に多い環境下でも酵母が死滅しにくく、雑味成分の少ないスッキリしたお酒になります。

● 生酛造りについてより詳しくお知りになりたい方は、「生酛WEB」へどうぞ。