第1巻 日本酒の作り方

麹の持つ様々な酵素と純粋に育てられた清酒酵母が活躍するのが、酒造りの中心になる醪(もろみ)の工程です。

醪の中では、酵素の力で蒸米のデンプンがブドウ糖に分解されるだけでなく、各種アミノ酸、ペプチド、有機酸などが生成されます。そして清酒酵母はアルコール発酵を中心に様々な香味成分を造り出していきます。

また麹の役割は米の糖化、分解だけにとどまらず、清酒の香気生成に微妙に関わり、さらに清酒に「まるみ」をつけることもあります。生もとにおける発酵過程で生成された種々の成分とあいまって、ゴク味のある調和のとれた味が造り出されます。

清酒の醪仕込は三段仕込といって、酒母に麹、蒸米、宮水を「添(そえ)」「仲(なか)」「留(とめ)」の3回に分けて仕込みます。仕込に用いる麹、蒸米、宮水の分量は、前の仕込時の約2倍量となるよう加えていきます。
この操作は、雑菌による汚染を防ぎ、また、4~5%のアルコール濃度で酵母を繁殖させることにより、酵母にアルコールに対する耐性(強さ)を付与します。

15℃前後に保たれた醪は、表面の泡の状態を様々に変化させながら、14~20日間で熟成醪となり上槽(じょうそう:圧搾)されます。熟成醪のアルコールは19%近くにもなっています。

発酵タンク内のもろみ