第6巻 日本酒の歴史(前)

大陸からの技術導入と万葉期の酒

1.大陸からの技術導入

4~5世紀頃に大陸から、まず鉄工・鍛冶・武器工・織工・縫工等が渡来しました。 そして高水準の技術を有する指導者が渡来してきたのは、5世紀も後半のことでした。
麹を利用した我が国の酒造りは、弥生前期までさかのぼることができますので、5世紀に渡来人が初めて麹による酒造りを伝えたわけではないと考えられています。
我々の先祖は、我が国に古くからあった固有の酒造技術に渡来人からの技術を巧みに取り入れて改良し、日本独特の酒造りへと変化させていきました。

2.万葉の酒

飛鳥から奈良朝に至る「万葉の時代」には、酒造りの技術もかなり進歩しました。
平城京跡から出土した木簡には、「清酒(すみざけ)」「浄酒(すみざけ)」の語が見えます。
この時代の「清酒」は、現在の清酒とは全く異なった酒質と思われますが、醪を袋でしぼったり又は上澄した酒で澄んでいたため、この名で呼ばれました。
もちろん、このような澄んだ酒は一部の上流階級の飲み物で、人々は濁った酒を飲みました。