第7巻 日本酒の歴史(後)

昭和前期の酒

昭和12年に日中戦争が始まると食糧事情も厳しくなり、酒造原料米も制限され、生産される酒の量も年々減っていきました。
酒が少なくなるに従って水で薄めた「金魚酒」が出回るようになり、これを取り締まるために政府は、昭和15年にアルコール濃度による酒の規格を制定し、15年から18年にかけて特・一級等の級別制度を作り、さらに昭和18年には戦争の激化に伴い、酒も配給制として生産から消費まで統制するようになりました。

金魚酒;金魚でも泳げるような薄い酒という悪称。

戦後、酒の配給制度は廃止されましたが、特・一二級の審査による級別制度は残されました。
昭和20年には、全国の清酒生産量は82万石、22年には50万石にまで落ち込みました。そのために酒が足りなくなり、密造酒が横行しました。
この時期の酒不足を補う対策として、24年に三倍増醸酒が開発されたのでした。
これは戦時中の合成清酒の研究の成果が生かされたもので、アルコール添加によるエキスの不足分を糖・有機酸・アミノ酸を加えることで補い、酒の量を3倍にする方法です。