日本酒なんでもFAQ

お酒のプロが答える日本酒なんでもFAQです。
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「アルコール醗酵」とはどうなる状態ですか

米のでんぷんが麹によって糖化され、そのブドウ糖が酵母菌によって、アルコールと炭酸ガスに分解される状態をアルコール醗酵といいます。
(なお、醗酵と腐敗は同じ化学反応を指しますが、人間に有益なものを醗酵といい、有害なものを腐敗といいます)

「並行複醗酵(へいこうふくはっこう)」とは何ですか

並行複醗酵とは日本酒独特の醗酵で、米のでんぷんが麹によって甘くなる糖化作用が行われながら、ひきつづき同じ容器の中で、その糖が酵母菌によってアルコール醗酵することをいいます。このような並行した複醗酵は日本酒独特のもので、他の醸造酒と比較し、高アルコールとうまみを出す根源となっています。

日本酒、ビール、ワインに醗酵の違いがありますか

日本酒は並行複醗酵ですが、ビールの場合は麦芽糖にいったん変えて、ビール酵母により醗酵させるので複醗酵といい、ワインやリンゴ酒は、はじめから糖分があるので単醗酵といいます。

甘口と辛口に製造の違いがあるのですか

甘口、辛口酒の製造の差は仕込み時の温度も多少影響しますが、仕込み時の麹、水の配合量や醪醗酵の日数が作用します。しかし、最近では添加物(ブドウ糖・水あめなど)や四段仕込みによって甘口の酒は作り易くなっています。当社のようにうまい辛口酒を造る場合、生酛によって手造りのゴク味を出すのが本流となります。造りも難しく、ブドウ糖のかわりに米を多く使わなければなりません。従ってコスト高になります。
(アルコールを添加すれば辛くなるが、これだけではうす辛い酒になってしまいます)

酒造りの工程を教えて下さい
米からお酒になるまで何日ぐらいかかりますか

浸漬:1日
麹(こうじ):2日
生酛造り:21日
醪造り:14~16日
計38~40日で新酒ができあがる。

尚、精白、おりひき、濾過、火入れを入れると約50日になる。この後、熟成には3~6ケ月を要する。

純米酒の場合白米1升(1.5kg)から何Lの原酒ができますか

醸造の方法により差異がありますが、標準としては2.9L程度です。

「アル添」とは何ですか、製造のどの段階で入れるのですか

醸造過程において(しぼる1-2日前)原料アルコールを加えることをアル添といいます。これは米不足時代(第2次世界大戦中)に行われたものが今日化したものです。サラッとした淡白さ(べとつかない)の利点もあり、日本酒の標準的味感となっています。現在では一般化されているので、アル添は必ずしも非難されるべきものではありませんが、最近は、全国的に添加率が減ってきています。

酒母(しゅぼ)と酛(もと)とは何ですか?

酒母(もと)の役割は、日本酒のアルコール醗酵を行う「清酒酵母」の育成をはかることにあります。この酒母(もと) に麹、蒸米(でんぷん)を仕込むと糖化作用により生じたブドウ糖に対して酵母菌が作用し、アルコール醗酵を行います。当社は生もと系酒母を採用しています。

「酒母」にはどのような種類がありますか

酒母には生酛系酒母(生もと、山廃酛など)と速醸系酒母(速醸酛、高温糖化酛など)があります。最近では酒母を造らず初添時に大量の培養酵母と乳酸を加える「酵母仕込み」も盛んに行われています。

「キクマサ酵母(こうぼ)」について教えて下さい

酒造メーカーの多くは、日本醸造協会が発売している協会酵母を使用していますが、菊正宗では蔵に昔からすみついている酵母菌を独自で開発して、優れた性質を持つよう育成して使用しています。それを「キクマサ酵母」と呼称しています。
キクマサ酵母の性質は醗酵力が旺盛で、菊正宗のうまい辛口酒造りに非常に適しています。

「生酛(きもと)とはどのような酒母ですか

日本酒醸造の基礎となる部分である酵母の培養液(酒母または酛という)を手造りで麹、蒸米、宮水をよくすり合わせて、手間と時間をかけて造ったものをいいます。

この生酛は自然の力により、野生酵母や雑菌を淘汰し、キリッとした味を出す力強い優良な酵母だけを培養できる特性があります。
辛口酒はエキス分が少ないため、一般にうまみに欠けるきらいがあり、そのうまみ(ゴク味)をいかに出すかが辛口酒の製造のポイントになります。本物の辛口酒はこの手造りのゴク味をもった生もとを採用することによってのみ、酒にゴク味、香りが生きてくるといえます。

「山廃酛(やまはいもと)」とはどのような酒母ですか

酵母菌を培養する酛づくり(酒母育成)において、生酛は酛すり(山卸し)を通常3回行ない、米粒をすりあわせます。
山廃酛とはこの酛すりを廃止した酒母育成法で、半切り桶を使用せず、もと卸桶に、麹、蒸米、水を仕込み、酛すりの代わりに櫂(かい)入れなどを行ない、蒸米をつぶさずに溶解、糖化を行う点が生もとと異なります。当社は生酛方式です。

「速醸酛(そくじょうもと)」とはどのような酒母ですか

明治の末期に江田鎌治郎によって考案された酒母育成法。天然の乳酸菌によって乳酸を獲得する生酛系に対し、乳酸を添加することで乳酸醗酵を省略し安全かつ短期間で酒母を育成する。

「三段仕込み」、「四段仕込み」とは何ですか

三段仕込みとは醗酵(もろみづくり)を行うのに酵母の働きを十分にするため、初添、仲添、留添の3回にわたって蒸米、麹、宮水を添える(入れる、仕込む)ことをいいます。
初添の翌日は踊(おどり)といって保温し、一日置くが、これは酵母菌の働きを活性化させるためです。
四段仕込み(四段がけともいう)は、アル添の前後に甘口の酒を作るためにもち米や糖化醪をもう1回仕込むことをいいます。

「融米造り」や「焙炒造り」とはどのような製法ですか

原料米の処理の方法で、蒸気を当てて米を蒸す工程において、「融米造り」では米をミキサーで潰して酵素剤を加え、加熱して溶かして使用し、「焙炒造り」では、蒸気の代わりに220℃から230℃の熱風で米を炒る方法です。

純米酒の場合、醗酵でできるアルコール度数はどれぐらいですか

醸造の方法により異なりますが、一般的には19%前後です。しかし、最近開発された特殊な酵母菌を使用すると、20%以上のアルコールを出すことが出来ますが、バランスがくずれる恐れがあります。

「酒粕」や「米糠(こめぬか)」は何に利用されていますか

酒粕は酢の原料、漬け物(魚肉の粕漬や奈良漬、わさび漬)、焼酎、 インスタント甘酒、食用(粕汁など)に利用されます。 糠には白糠と赤糠がありますが、赤糠は家畜の飼料、米油、漬け物用に、白糠は友禅用のり、 インスタントラーメン、 せんべいなどに使用されています。また、メーカーによっては、米の代用として米糠糖化液によりコストダウンをはかっています。当社では一切使用していません。

「炭素濾過(たんそろか)」とは何ですか、なぜ行うのですか

活性炭素は酒の中の雑味や色素などを吸着、除去する性質があるので、脱色、脱臭および火落ち防止に効をあげるために行います。雑味や色素などは温度や光線などの悪条件のもとで酒の品質劣化の大きな原因となるため、品質保持上からも炭素濾過を行う必要があります。

炭素濾過の際、日本酒独自の香りは除去されませんか

活性炭は日本酒の脱色だけでなく、味、香りを整える働きもあり、重要なものです。
貯蔵熟成中につくと好ましくない味、香りを活性炭が吸着し、取り除いてくれます。このとき、日本酒独自の香味もいくぶん吸着されます。日本酒独特の香りを活かす生酒、生貯蔵酒、吟醸酒などでは活性炭の添加量を極端に少なくし(使用しない場合もあります)、生酒、あるいは吟醸酒の風味をできるだけ残すようにしています。
また、活性炭の種類もその働きにより、脱色を主にしたもの、味の調整を主としたものなどがあり、酒質によって様々に使い分けられています。

「おり」、「おりびき」とは何ですか

おりとは、上槽した(しぼった)新酒をタンクに入れて数日間放置し、下部にたまった白い沈でん物をいい、おりびきとは、その上澄みの日本酒を取り出す(おりを除く)作業をいいます。

「おり下げ」、「濾過(ろか)」について教えて下さい

日本酒のサエ、すなわち清澄度を増すために行う操作で、たとえば柿渋を酒の中に加えて柿渋中のタンニンと酒に含まれる蛋白の微粒子を結合沈でんさせ、さらに濾過して酒の中の混濁物質を除くことをいいます。

「火入れ(ひいれ)」とはどうすることですか、また、何度ぐらいで行うのですか

火入れは、日本酒ができあがり、清澄、濾過したものを熱交換機で加熱して酵素の働きを止め、火落ち菌の殺菌と酒の調熟を目的として行われます。温度は65℃前後です。

原酒貯蔵の適温は何度ですか

15℃前後が適温です。これは過熟(熟成が進みすぎること)と火落ちを防ぐためです。
なお、5℃前後で貯蔵すると熟成がほとんど進みません。

「のみきり」とは何をすることですか

冬季の醸造が完了し、貯蔵したタンク内の日本酒の状態を調べるため、タンク一本一本について呑み口(タンクから酒をとり出す口)をきって、酒を小出しして品質の調査をすることをいいます。通常、夏に2~3回実施されます。

びん詰をする際にはどのようにして詰めるのですか

65℃~70℃の熱酒を詰めます。熱酒を詰めるのは殺菌が目的ですが、びん詰後、熱酒が冷える時にびん口の部分がバキュームされて真空に近い状態となり、空気による酸化防止となって品質保持にもたいへん有効です。